【獣医師執筆】あなたの愛犬は水分をしっかり摂っていますか?

あなたの愛犬は水分をしっかり摂っていますか?

犬は食事と水から水分をとっています。

もし、愛犬が食事も水も口にしない場合にはどのようにしたらいいのでしょうか?

今回は、犬が1日にとるべき水分量と、愛犬の飲水量を調べる方法、脱水になってないかの見分け方、愛犬が水分を摂らない場合の対処法や対策について解説します。

犬が1日に飲まないといけない水の量とは?愛犬の飲水量を調べる方法

ここでは、ペットボトルを使用した飲水量を簡単に調べられる方法をご紹介します。

・犬が1日に飲まないといけない水の量

健康的な犬が1日に必要な飲水量の目安は、体重1kgあたり50~60mlです。

例えば、体重が5kgの犬の場合は、500mlのペットボトル半分くらいの量になります。

しかし、気温や湿度、運動量、食事に含まれる水分量などによって変わってくるため、愛犬の平均的な1日の飲水量を把握するようにしましょう。

・愛犬の飲水量を調べる方法

①空のペットボトルに水を入れ、量がわかるようにマジックなどで印をつけます

②ペットボトルの中の水を飲水用の器に入れます

③1日の終わりに器に残っている水をペットボトルに移し、水がどれだけ減っているかチェックします

④これを何日か続け、愛犬の平均的な1日の飲水量を出します

  • 犬が水を飲まないとどうなるの?脱水のチェック方法

犬が水を飲まなくなると、体の水分量が減って脱水の状態になります。

ここでは、愛犬が脱水になってないかのチェック方法と、脱水が進行した場合の危険性について解説します。

・愛犬が脱水を起こしてないかのチェック方法

以下のように皮膚の弾力を調べることで、愛犬が脱水状態にあるかどうかチェックすることができます。

①犬の首の後ろの皮膚を軽くつまんで、優しく5cmほど持ち上げます

②指を離した時にどのくらいの時間で皮膚が元の位置に戻るのかを確認します

③正常であれば皮膚はすぐ元の位置に戻りますが、2秒以上戻るまでに時間がかかる場合には脱水が疑われます

④つまんだ皮膚が立ち上がったままであればかなり深刻な脱水状態です

・愛犬が脱水を起こしている場合に見られる症状

以下の症状が愛犬に見られた場合には、脱水になる可能性が高いか、すでに脱水の状態です。

・舌を出しハアハアしている

・目が落ちくぼんでいる

・口の中が渇いている

・元気がなく弱っている

・無気力でボーっとしている

・愛犬が水分を摂らないと命に関わる危険性も

犬は食事と水から水分を摂っています。

愛犬が食事を食べない、水も飲まない状態が続き、脱水が始まってから何日も経過すると、重度の脱水になります。

重度の脱水になると、腎不全などの腎臓病やその他の臓器が機能しなくなるのです。

特に、以下のような症状が見られる場合には、命に関わるレベルで脱水を起こしている可能性があるため、すぐに動物病院を受診しましょう。

・呼吸が荒くハアハアしている

・意識が混濁し倒れる

・立てない

・歩けない

・痙攣(けいれん)が見られる

・声かけへの反応が遅い

・おしっこがかなり少ない、あるいは出ていない 

  • 愛犬が水分を全く摂らなくなった時の余命は?

愛犬が食事を食べない、水も飲まない状態が何日も続くと、犬の体重が徐々に減り、痩せて活動量が減少します。

さらに、うんちやおしっこなどの排泄量が少なくなったり、意識がもうろうとしたりなどの症状が見られ始めたら、残された時間が少ないサインです。

犬がご飯も水も全く口にしなくなってからの余命は短く、3〜7日くらいでしょう。

ただ、動物病院で体の水分を補う点滴などの処置をすると、犬の余命の時間が伸びる可能性があります。

犬が水分を摂らない時の対処法や対策

・水分を摂る環境を整える

椎間板ヘルニアなどで体に痛みがある場合や、脳梗塞などで体にこわばりがある場合には、床にある食器まで首を下げる姿勢をとることが難しいため、食事や水が摂りやすいよう食器を犬の高さに合わせるなど食べさせ方や飲ませ方の対策をしましょう。

また、体に痛みがある場合や老犬では、水を飲みに行くという行動そのものに消極的になってしまうため、水飲み場を増やすなどの対処法がおすすめです。

・食事から水分を摂れるようにする

犬は食事の香りが強いと、食い付きがよくなる場合があります。

ドライフードにぬるま湯や犬用の牛乳を入れ時間を置きふやかしたり、ドライフードからより香りのあるウェットフードに切り替えたり、ウェットフードを電子レンジで人肌ぐらいに温めたり、食欲をそそる対策をしましょう。

それでも口にしたがらない場合には、水分でふやかすタイプのフードや、ペーストタイプのウェットフード、水分やカロリーを多く含む犬用のゼリー、手作りの流動食を作り与えるといった対策があります。

これらの方法は犬の食欲をそそるだけでなく、食事と一緒に水分を摂取させることができるのでおすすめです。

手作りの流動食は、肉や野菜で作ったスープ、犬用の牛乳などにゼラチンを加えると簡単に作ることができます。

・水に工夫を加える

肉や野菜で作ったスープや、犬用の牛乳を水に数滴加えることによって、風味付けをしてみても良いでしょう。

また、寒さや口の痛みなどから水を摂りたがらない場合には、冷たい水を与えるのではなく、常温の水を与えてみるのも一つの手です。

・飼い主の手からあげてみる

食器から食事や水を摂らない犬が、飼い主さんの手からであれば食べるということもあるので、一度手を使ってあげてみましょう。

・どうしても水分を口にしない場合は強制給餌を検討する

老衰や脳梗塞で寝たきりの状態になり食事や水を口にできないの場合や、どうしても食事や水を口にしたがらない場合には、シリンジなどを用いた強制給餌を検討しましょう。

ただ、強制給餌では、飲み込んだ食物や水が食道ではなく気管に入ってしまう「誤嚥(ごえん)」が起こりやすいため、食べさ方や飲ませ方について動物病院でしっかり指導を受けてから行うことが大切です。

強制給餌の際には、常に愛犬の様子を確認しながら、与え方や与える量、与える時間や間隔などを調整しながら行いましょう。

最後に

今回は、犬が1日にとるべき水分量と、愛犬の飲水量を調べる方法、脱水になってないかの見分け方、愛犬が水分を摂らない場合の対処法や対策について解説しました。

特に、強制給餌に関しては、愛犬の嫌がることをしなければならないので、飼い主さんが辛いと感じてしまうことがよくあります。

そして、愛犬に無理に延命を強いているようで、人間のエゴではないかと考える飼い主さんもいらっしゃるようです。

そういった場合には、家族や動物病院の獣医師としっかり相談した上で、最期に愛犬にストレスをかけないために、口の周りに水を含ませるのみにするなど対処法を検討してみましょう

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